奇譚集

深夜オフィスの怪

先日、仕事上のトラブルの対応で、オフィスで夜を明かした。たった一人で。 深夜のオフィスは昼間の喧騒とはうって変わってしーんと静まり返っている。電話もならなければ、話し声一つ聞こえない。このオフィスビルには喫煙所は1階にしかない。私がいるのは…

毒入り菓子殺人事件(その2)

ただちに警察は殺人事件と断定し、捜査が開始された。警察はまず郵送された菓子の出所を追った。 問題の菓子は池袋のデパートで販売されたものだった。郵送した場所は豊島区の郵便局窓口だった。対応した局員によると野球帽をかぶった小太りの中年男性だった…

毒入り菓子殺人事件(その1)

かなり前のことになるが朝刊の一面でこの記事が掲載された。 私は驚いて言葉が出なかった。私はこの店に頻繁に出入りしていた時期があり、店主もその娘も顔見知りだったからだ。あくまで店と客の関係なのでそれ以上に親しかったわけではない。記事を読んであ…

エントランス・シンクロニスシィ

昨晩、息子一家が家に来ていたので夜は出前の寿司を注文した。食べ盛りの男の子もいたので大小2つの寿司桶となった。朝までに桶をマンションのエントランスに出しておいてほしいというので夜のうちに、出しておいた。翌朝のことである。買い物に出かけよう…

ご近所奇譚

長男が3歳だったのころのエピソードである。彼にはその当時不思議な力があった、と私は今でも確信している。 ■公園墓地ある晴れた秋の日、私は彼と二人で近所の公園墓地を散歩していた。 二人並んでいくつもの墓の前を通り過ぎた。彼はふと足をとめると見ず…