下りのホームに列車が到着するまでその娘はずっと黙りこくっていた。列車が到着してその扉が閉まる瞬間、彼女は意を決したようにこう言ったのだ。

「ゆ・・・」

発車のベルにかき消されて僕の耳に届いたのは、

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の一文字だけであった。

それから長い歳月が流れたが、僕はまだ「ゆ」の呪縛から逃れられないで、相も変わらずあのホームにたたずんでいる。